武田刃物 和式ククリ インプレッション


鉄の城(リンク参照)
のシロウ氏所有の和式ククリ2本のインプレッションをお送りします。



使用環境・・・2月16日 気温マイナス5度。 千曲川水系某河川源流域にてフィールドテスト。

SPECS

全長 : 320mm

刃厚 : 47mm

鋼材 : 青紙スーパー

ハンドル材 : 黒檀ハンドル 和装飾紐巻きハンドル

シース レザーシース(黒檀) 西陣織の古布貼り木鞘(紐巻き) 

備考 : 刀身作成・・・武田刃物 様  柄・鞘作成・・・シロウ氏。




      
左の鞘が黒檀ハンドルのレザーシース。
右の鞘が紐巻き拵えの鞘。
上、紐巻き拵え。  右、黒檀ハンドル。



2本とも、武田刃物さんに特注して鍛えてもらったものだそうです。
武田刃物さんは青紙スーパーを扱わせたらおそらく日本でも有数の名人といえると思います。
そして、ククリのデザイン設計、柄・鞘の装飾、全てシロウ氏のオリジナルとなっています。

見た目

和式拵えの紐巻きと黒檀ハンドルの2通りあります。

      ・
紐巻き拵え 柄のUP
これはシロウ氏個人の施した装飾。
素晴らしい!!
黒檀ハンドル 柄のUP
見た目には滑りそうだが・・・?




第一印象

ブレード

見た目にはほとんど同じ蛤刃、性能に違いはありません。
ただ、オーナーのシロウ氏によって砥ぎわけてありますので少々性格が変わります。
紐巻きハンドルの物は、きっちりと仕上げまでかけてあります。
黒檀ハンドルは1000番に刃先だけ仕上げを軽くかける形にしてあります。
ブレード自体の自重が非常に軽い為、ヒマラヤやインドククリのような感覚では扱えませんが
フロントヘビーである構造上の違いはありませんので使い方はククリの使い方でないと優れたパフォーマンスを発揮できません。
ただ、おそろしく刃が立っているので身厚の本場物では適応外の笹藪などでの藪はらいなどでも使用可能。
手首を固定した正しいククリの使い方手首のスナップを効かせたナイフのような使い方
と両方こなせる一振りであると言う事です。


私より先に検証したククリマスター達から先に前評は聞いていたが、、、、なるほど、刃がかなりたっている。
鋭い切っ先はちょっと触れればパックリ行くだろう。足を切らぬよう考慮せねば。
切れ味はすごいが自重はひじょうに軽く、フロントヘビーを活かした使い方は難しそう。
だが形状はまんまククリの為、それをきちんと考慮して使わねばポテンシャルは引き出せなさそう。
紐巻きはしっかりと握ることができる。 黒檀は見た目も持った時点でも滑りそうな印象を受ける。

      ・

  2本の刃厚、柄厚の比較。



木を対象に実際に使ってみる。



枝クラス

先にも述べたが自重がない為にただ単純に打ち込んだだけでは食い込みは悪い。
くの字で斜の原理を働かせる事を考慮し、また、無理なく食い込ませるにはどこを
打つか考えながら使用する事
でよいパフォーマンスを発揮する。
切れ味がすごいので枝状の横に生えた生木は直径3cmくらいまではほとんどが一刀で切り落とせる。
立木の場合は紐巻きでは3cm、黒檀では4cmが限度。

      ・
直径1cm。余裕。抵抗を感じない 直径2cm。余裕。スパっといく。
直径約3cm。刃筋さえ通せば一刀。 直径約3cm。 あえて二刀で。
約5cmの蔦。インパクトした瞬間に歪み、
衝撃を吸収してしまう。
まずは基本の右袈裟に。刃が非常に立っている為、
衝撃を吸収する間を与えずに刃が食いこむ。
二刀目は左袈裟に 三刀目は再び袈裟で抵抗なく両断。



薪クラス

薪クラス相手になると性能はほとんど変わらない。堅く引き締まった木にはどちらも自重がない為食いこまず、疲れます。

つい先ほどまで渓流の中に入り、気温-5度、水温3度になんども手を突っ込んでる為手が痛い。

紐巻きは寒さでかじかんだ手が痛くて途中で嫌になる。グローブを装着する事でなんとか解決するがその分精度が落ちる。
黒檀の方もこのクラスの木が相手となると前評の通り、衝撃が骨まで響いて非常に痛く嫌になる。
しかも、グローブを装着してしまうと掌の中で滑るというかインパクトした瞬間に柄が回ってしまうのでとたんに刃筋が立たなくなる。

      
切断。5分は掛からぬが・・・掌が痛い。 堅い。これくらいになると鋸や腰鉈の出番。
剣鉈や大型ナイフでは厳しい。

どちらも直径5cmを超える薪の切断は適応外。刃が8寸あり、もう少し自重があれば薪の切断にも使用できるだろう。
ちなみに本場のククリはこの程度の薪は楽勝です。うちのインドククリは鋸、斧についで薪の切断効率に優れています。

ここまで酷使して刃欠けや切れ味の低下は感じない。刃持ちも素晴らしい。
ただ、薪クラスにガンガン打ち込んだ際は少々歪みが発生し、鞘滑りが悪くなった。
が、すぐに打ちこんだ状態で修正できた。

焼き魚用の串を削ってみる

黒檀ハンドルを使用。
これは文句のつけどころがなく非常に使いやすい。
脇をしめて物を固定し串となる枝を動かして削って行く。枝の角度を変えながら刃を撫でてやる事で鋭く削りだす事ができた。

      ・
ククリを固定し、枝を動かして削る。
非常に使いやすい。ニンジンの皮剥きのようだ。
こちらは枝を持ちククリを動かして削る。
力加減と角度を間違えると削れ過ぎてしまう。


魚を捌く

 今年初物 詳しくは渓流日誌 2008/2/16を参照。(写真をクリック)

本来の用途では魚を捌くことは適応外であろうがせっかくなのでやってみた。
ウロコを落とすのは特殊な形状が逆に功を奏して非常にやりやすかった。

      
鱗落としは意外とやりやすかった。 腸出しもまったく問題ない。

くの字に曲がってる為、柄を持つ手が雪や水に手が触れずに鱗を落とせた。これが柄に水平な刃だと手が濡れる。

余談だが気温(-5度)より水温(3度)のほうが暖かく、水がぬるま湯に感じる。

腸出しもスっと吸い込まれるように刃が入り、ストレスなく作業ができる。
捌きはさすがにやりづらく、かじかんだ指先も手伝ってよいパフォーマンスは発揮できなかった。
が、枝、薪を打ち、酷使した後の捌きであったが切れ味の低下はほとんど感じない。
狩猟刀(ハンティングナイフ)としての使用は適応外だが、調理を考慮しない
渓流刀としては長さも重量も切れ味も申し分ない。フォルダー(折りたたみ式)とペアであれば困らない。






使用してみて柄を比べてみる

ブレードはほとんど一緒なのでこの2本を比較するには柄の違いを比べてみなければならない。

比較前に持ち方についてちょっと一言

ダメな持ち方と正しい持ち方の比較です。もちろん、柔軟に持ち方を変えるのが基本ですが、
立木に打ちつける際の参考程度にお聞きください。

 ※写真@

写真@・・・持ち方×な図。  

何か棒状の物を持って赤丸部分を触ってみてください。プニプニでしょう?
このプニプニがインパクトした瞬間の衝撃を吸収してしまいます。プニプニでんだ分、刃も後方にずれます。
これでは真のポテンシャルを発揮できません。


 ※写真A

写真A・・・持ち方の図。  

の部分を見て下さい。人差し指の骨が乗ってます。この状態で打つと骨が受け止めて衝撃が逃げません
堅い骨の力がダイレクトに伝わります。切れ味が良い刃物であればサクんと入ります。

衝撃を吸収してしまう宙に浮いた状態の横木を打つ際にこの差がでます。あてた瞬間に木がたわむなりしなるなりして
ただでさえ衝撃を吸収してしまいます。ダメな持ちかただとさらに衝撃は伝わらず、結局多くの労力を費やしてしまいます。
さらに擦れる事でマメもできやすくなります。人差し指の骨に乗せる打ち方はかなりの慣れが必要です。
上の柄を持った写真も人差し指の骨に添った持ち方ですので参照してみてください。

最初は手首を壊すのでは??と思う事でしょう。ですが慣れると雲泥の差です。
連続的に打ち込んでいるといつの間にかダメな持ち方に戻ってますので注意してください。


それでは柄を比較してみましょう。

紐巻き拵え
柄下地は黒檀で黒漆で何重にも重ね塗りしたものに
本鮫革を貼り、日本刀と同じ手法で日本刀用の柄紐を巻き上げ、その上から
透明漆を何度も、紐にもきっちりと染み込む様に塗りこんでいます、さらにそれを透明ウレタンでコーティングして水ぬれしても
大丈夫なように加工してある為、防水は完璧。だが多少手が濡れると防水加工のおかげで少々滑ります。滑り止め加工である紐巻
きもコーティングされているゆえに少々衝撃吸収が弱く感じる。寒冷地での使用はちょっとした突起や凸凹が掌にダメージを与え
ます。今回の検証はマイナス5度の渓流での使用ゆえ、握る手が痛くて木を打つのをためらってしまう。
これが夏山であれば問題ないのであろうが冬季は少々厳しい。グローブをする事で解消される。




黒檀拵え
非常にフィット感のよいハンドル。黒檀のハンドルにアマニ油を入念に刷り込んで仕上げてあります。握りごこちは最高。
当初は衝撃がダイレクトに響くので少々痛いとの声があったがフィールドでの使い心地は素晴らしい。 最高である。
薪を相手にした時は秘めたポテンシャルを発揮できないため、嫌になったがそれは気温による想定外の事なのでここでは触れない。
鉈柄に比べて細いので掌の中で刃筋をしっかり立てられる。早い話が刀と竹刀の握りごこちの違いです。
竹刀は、刀は角を丸めた長方形。あれと同じです。丸よりも長方形のほうが手の内を把握しやすい為、打ち込んだ時にし
っかりと刃筋を立てやすい。また、骨の力が物にしっかりと伝わる。しっかりと手の内や刃筋を意識できる黒檀ハンドルは
リバースグリップでも3〜5cmほどの生木を一刀両断できる。これはブレードの切れ味ではなく、柄の形状による刃筋の立
て易さ
がすぐれている為であるのは間違いない。柄尻の突起は見事に滑り止めの役割を果たし、レギュラーグリップ
でもリバースグリップでも確実なフィッティングを約束してくれる。これは使いやすい!!
ただし!厚手のグローブは厳禁である。

      ・
この突起がすっぽ抜けを防止する。 リバースグリップでは親指の付け根の骨を意識

当初、私は紐巻き拵えで私の山刀の柄をカスタムしてもらおうと思っていたが、黒檀ハンドルでお願いしようかな??
と考えてしまった。





鞘について

紐巻き拵え
ヒマラヤやインドククリ同様ククリらしい形状の鞘に雅な和装飾を施してあり、見た目にも大変美しい仕様。
朴の木を下地に西陣織の古布を貼り付け、鯉口と小尻の部分は鮫革を巻いたものに黒漆をかけ、全体を透明
漆で何度も塗り重ねて仕上げてあります。下げ緒と栗形はともに日本刀用の物を使用してあります。柄も鞘
も入念に漆仕上げになっていますので野外で全く気兼ね無しに使用することが出来ます。日本刀同様の栗型
が設けられており、下緒をとおして装着。今回のテストではフィッシングベルトに差し、念のため紐をカラ
ビナ通してフィールドへ。鯉口は打刀同様に上方向を向くため、自重で落ちるという事はない。さらに鞘の
形状上、簡単には抜けおちないので飛んだり跳ねたり雪の中を泳いだりしてもまったく問題なかった。
(シロウ氏自身が施した装飾です)


    


黒檀拵え
ブレード形状に合わせたレザーシース。ボタンをはずしてパンチングアウトのように真上に引き出す。
ベルトに装着する事が前提の為、ベルト必須。今回、私は防寒着に身を包んでいた為、
カラビナに通してフィッシングベルト兼ウェストポーチに装着した。
抜き終いするたびにボタンを外して止めての動作が必要だがストレスはあまり感じない。
後半は自然に手が動くようになった。

    





まとめ

紐巻き
見た目は最高。日本人ならこれだろと言い切れる。
実用面ではインドアにおける細工に最適な粘い刃を持つが形状が形状だけに木工作業には厳しい。
アウトドアとなると気温に左右されるが力のある人なら黒檀よりもしっかり握れるのでよいパフォーマンスを発揮できるかもしれない。
グローブ装着で気温対策は解決するが黒檀ほど実用的ではない。

黒檀
アウトドアにおける実用面では文句のつけどころがない。
水にぬれると多少滑るがグリップエンドの突起がすっぽ抜けを防止する。
鞘がレザーであることがパッキングなどの際に非常に有効。
ちょっとした隙間に収納できるので同クラスの鉈や上記紐巻きと違いかさ張らない為である。
ただ、上記利点もあるが沢での遡行を考えるとレザーというのがネックになる。
鞘の選択ひとつとっても難しいものである。
あらゆる事態を想定すればカイデックスが一番なのだが見た目が味気ないし、、、ナイフは奥が深い。。



総評というか個人的要望。

どちらかを選びなさいと言われたら、私は迷わず黒檀ハンドルである。
これは私が渓流や山岳を中心としたアウトドアでの実用面を重視する為です。

どちらかを家宝にして神棚に供え、代々受け継いでいきなさいと言われれば当然、紐巻きを選択する。

個人的に刃長があと2cmあればかなり化けると思います。
切れ味と刃持ちは本当に最高レベル。研ぎ手の腕前もあるでしょうが私が所有するどの刃物よりも切れます。
以前、武田刃物の店頭販売で見かけた長寸の腰鉈の購入を真剣に考えてしまう。

このククリは重さではなく切れ味で対象を切るものなので、ここにもう少しの重量と長さが加われば文句のつけどころがありません。

今回は使わせていただく機会を設けてくれたシロウ氏、および素晴らしい切れ味の刃物を作りあげてくれた武田刃物の皆さんに
改めて感謝し、この場をかりてお礼申し上げます。ありがとうございました。


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