《私の本棚 第十三 》    1998年(平成10年)4月
 
   「漂泊の魂」 (原題クヌルプ  ヘルマン・ヘッセ (Hermann Hesse )
 
 早春・クヌルプへの追憶・終焉の三部に分かれています。「早春」は主人公クヌルプの若かりし頃を本人の言葉で、「クヌ

ルプへの追憶」は同時代を友人の言葉で、「終焉」は短い一生を終える中年の主人公の言葉で綴られています。

 主人公は或る小さな失恋をきっかけに、優秀な成績の学業を捨て、貧しい放浪の人生を始める。放浪の生活をしてはいる

が、決して放埒ではない。終焉はふるさとを見下ろろすことのできる雪の積もる森の中で一人迎える。

 早春は主観的な自己との対話、クヌルプへの追憶は客観的な自己との対話、終焉は絶対他者である神との対話と読めま

す。主人公は全編を通じて他人への恨みはなく、さりとて深入りする訳でもなく、淡々と一定の距離を持って接している。或る

意味では人間に対する不信でもあり、孤独感でもある。自然の中にいるときは安らぎを感じ、他者と接しているときに孤独を

感じる主人公ヘルマン・ヘッセ(参考)は、多分に東洋的ともいえます。 失意の中での最後であるはずの時に、神との対話

の中で、これまでの生き様を肯定する部分は、磨かれた心の輝きとも取れます。                                

                                                              

           前の頁 ,清兵衛と瓢箪   次の頁 ,徳田秋声の黴   本棚 目次 ,読書感想,あんな本こんな本                      トップ頁

                          

 
 
円山公園 しだれ桜円山公園
 
【本文との関係---発行季節】

枝垂れ桜 (参考)