《私の本棚 第二十八》   1999年(平成11年)7月
       
     「蟹工船」   小林多喜二 作
 
 この作品は、日本プロレタリア文学の代表的作品とされています。  昭和四年の作ですが、当時は発禁処分になるなどの

扱いを受けています。言論や思想の自由が認められない時代に、この作品のような貧困階級に焦点を合せた小説を発表

するということは相応の覚悟も必要だったと思います。作者自身も秋田県の没落農家の二男に生まれ、相当な苦労をした

ようです。

 
 通常は「主人公」が存在するが、この作品にはそれが無い。無産階級の半ば騙されたり、十四や十五の少年であったりの

集団が「私」として描かれている。絶対的な資本家と絶対的無力の労働者を対比すべく展開する。

 
 暴風の中、難破船の救難信号を受信するが、船長は利益優先の為に無視する。一人の漁夫が船内で病死するが、身も

凍るようなカムチャッカの海に葬られる。漁夫たちは自分の明日の身の上を見て取って、交渉に立ち上がるが弾圧されてし

 
まう。
 
 読んでいてもジメジメしないのは、確信的な思いが筆にこもっているからでしょうか。                                         
 
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カモメ,鴎
 

鴎の滑空