《私の本棚 第三十》     1999年(平成11年)9月
 
    「暗夜行路」   志賀直哉 作
 
 暗夜行路という題名から、私はつい、十七歳の時に見た尾道水道の夜景を思い浮かべます。暗い水道を挟んで直ぐそこ

に向島がありました。その夜の水道はそれ程頻繁でもなく、かといって随分少なくもなく船が行き交っていた事を覚えていま

 
す。海と船が大好きな私は、行路ではなく航路を連想してしまいます。この小説の題名に影響を与えているのかどうかは知

りませんが、作者はしばらく尾道で一人住まいをし、小説を書いていました。

 
 自伝小説ではないのですが、巧みに自伝的なものと虚構を織り交ぜています。主人公の時任謙作は、母と父方の祖父の

実子という運命を負って生まれてきます。初めてそれを知ったとき、放蕩するのはその血の性だと悩みます。しかし、尾道の

一人住まいを経て徐々に立ち直り、直子という伴侶を得ます。しかし運命は未だ彼を許さず、妻といとこの過ちと言う試練を

課します。謙作は、完全な意味で妻を許す為の時間を求めて大山へ旅立つ。そこで病を患い妻と再会しますが、生死や許

し切れたかどうかは読者に委ねられています。                              (奈良旧居)

                                     

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金毘羅


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