《私の本棚 第三十六》    2000年(平成12年)3月

   

「伊豆の踊り子」  川端康成(参考) 

「伊豆の踊り子」は何度か映画化されており、馴染みの深い作品です。作者が十九歳の折り伊豆に旅行した時に、旅

芸人の一行と道連れになります。この時のことをもとに、後年この作品を書いています。

   地図で物語の足跡を追って見ると、現在の国道四一四号線を三島方面から下田に向かって歩いています。伊豆長

岡温泉・修善寺温泉・湯ヶ島温泉・天城峠・湯ヶ野温泉・下田温泉と旅します。

   作者は幼くして両親と姉を失い、中学生で祖父母とも死別しました。天涯孤独の中で、二十二歳の時に十六歳の少

女と婚約し、菊池寛の好意で家まで用意していました。しかし、不可解な事でこの話はご破算になります。このような痛

手と、伊豆の一人旅での思い出が一つになって作品として完成しています。 

   東京帝国大学の学生と十四歳の踊り子との、そして又その家族とのほのかな交流が読みとれます。踊り子の初恋

に似た気持ちと、主人公(作者)の肉親愛に薄かった生い立ちをバックにした他人に対する優しさ。当時低く見られて

いた旅芸人と、何ら拘泥することなく接する主人公に共感が集まるのでしょう。

            前の頁 ,街道をゆく    次の頁 ,八十日間世界一周       本棚 目次 ,読書感想,あんな本こんな本                 トップ頁                                                   

浄蓮の滝