《私の本棚 第三十八》     2000年(平成12年)5月

    「草 枕」  夏目漱石 

「山道を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人

の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟ったとき、

詩が生まれて、画が出来る。」

 「吾輩は猫である」を書き終えて間なしに書き出して、ほぼ一週間で脱稿したそうです。冒頭の文章は大変有名で

すが、漱石がこれを書いた作意は捉えがたい難物と言う定評です。

 漱石は「草枕は世間で言う普通の小説とは全く反対の意味で書いたのである。ただ一種の感じ・・・・美しい感じが

読者の頭に残りさえすればよい。」と言っています。

 英国に留学した後、東大英文科の講師をしたくらい英語に堪能。漢文の素養があり、文筆能力に秀でている。そ

んな作者は、この小説の中で遺憾なく「あらゆる自分」を発揮しています。俳句・漢語・漢詩・英語詩・絵画的価値

観・そんなものが散りばめられています。それでいて嫌みを感じません。

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