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地域ケアの周辺

 1 無塩の韃靼蕎麦

 もし「地域ケア」という言葉を検索して当サイトが引っかかった方がいらっしゃって、本格的な地域ケア論を期待されているのなら、お気の毒様です。
 たとえば、地域ケアの王道を楽しく学ぶのなら、備酒伸彦氏の「地域ケアを見直そう」(医学書院刊)などを読まれることをお勧めします。
 このページでは、世にあまり知られていないけれども地域ケアに関係ありそうな(本当にないかもしれないが、ひょっとするとあるかもしれないような)、ささやかな情報を取り扱えたら、と考えています。

 さて、この場合、重要なのは「韃靼蕎麦」ではなく、「無塩の蕎麦」ということです。

 私の身内に心臓の悪い要介護高齢者がいます。麺類好きです。うどんでも蕎麦でもソーメンでもラーメンでも、そしてパスタでも好んで食べていました。
 普通、麺類には、大なり小なり塩分が入っています。ゆでている間に溶け出す量も少なくないのですが、ということは、蕎麦湯を飲むのも控えなければならない、ということにもつながります。
 これでは、心疾患のある人間は、安心して蕎麦を楽しめません。泣く泣く断念していたのですが・・・

 インターネット上で「無塩」「蕎麦」で検索してみると、けっこう、ヒットするものですね。
 関係ないページもありましたが、山形県の某製麺会社のサイトでは、無塩の商品が3種類ありました。韃靼蕎麦と普通の蕎麦、それに麦切り(平たく言うと、細いうどん)です。
 通販で取り寄せた3品とも、麺好き老人の舌を満足させるものでしたが、結局、他の家族の好みその他の状況もあり、週1回程度、韃靼蕎麦を食べる習慣が継続しています。
 もちろん、麺本体が無塩であっても、つけ汁の塩分は免れないわけですが、蕎麦湯に塩分が含まれないという効果もあります。

 親戚などに、この話をしていて気づいたのですが、世の中には、塩分を控えなければいけないのに「麺好き」という人は意外に多いようです。蕎麦だけで「生きる気力」とかいうと、大げさかもしれませんが、好きなものを食べるということが生き甲斐であったり、つらい治療やリハビリなどに耐える力になるという人は、少なくないと思います。

 無塩の(しかもおいしい)食品を開発するということは、福祉用具を改良したり、介護の新技法を工夫したり、ということと同じように大事なことではないかと思います。この手のことは、私たちが気づかないだけで、実は普段の生活のそばにたくさん隠れているのではないでしょうか。


 2 シャワートイレ

 前回は食べ物の話題でしたが、今回は出す方です。
 洗浄機能付きの便器、いわゆるシャワートイレ。
 一度使い出すと、体の不自由な人はもちろん、健常者もやめられない。

 介護保険上の取扱いは、ちょっと微妙です。
 和式便器から洋式便器に取り替える際に洗浄機能付きにするのは住宅改修費として認められますが、すでにある洋式便器に洗浄機能を付加するのは対象外です。
 まあ、わかるのですけれどね。和式から洋式への変更は、要介護者にとって有効な場合が多いですが、洗浄機能が付いたからといって、一般的には「介護に要する時間」がそれほど劇的に減少するわけではありませんから。
 でも、場所が場所だけに、心理的な影響は少なくないでしょう。シャワートイレなら自力で利用できる、というレベルの方なら、自尊心の維持、在宅生活継続のために、投資効果は期待できるのではないでしょうか。介護保険の住宅改修費の支給も、事前申請が原則になったことですし、保険者判断で対象として認める制度としてもよいような気がします。

 洋式トイレに洗浄機能を付加したときの効果についての研究のようなものは、厚生労働省あたりではやっていないのでしょうかねえ?
 和式から洋式への変更については、多数ありそうな気がしますが。

 さて、この機能、特に上肢などの障害者にも当然有効でしょうが、「ボタン操作で洗浄開始」という手順は、たとえば、ある種の知的障害児(自閉傾向のあるお子さんなど)とも相性が良さそうにも思います。
 ただ、療育手帳や特別児童扶養手当認定診断書の判定などで、
・自宅のシャワートイレでは自立
・学校などのトイレでは一部介助
という状態を、どう判断するか、というのは、ちょっと悩ましいかもしれません。

「家庭(日常の生活)の中で、自信をつけさせながら、少しずつ自立を目指す」
「社会に出ても自立できるように生活の指導を行う」
 このあたりのバランスの取り方も難しいように思います(もちろん、本人の状況にもよるでしょう)。
 文明(特にハードウェア)の進歩によって、福祉制度、判定基準や療育方法などの考え方も、見直していく必要があるのでしょうね。


 3 過疎地の地域ケア研究会

 今回は、「周辺」ではなく、まさに地域ケアの本丸の話というべきかもしれません。
 これは何でしょう?

健康づくりのお手伝い障害者更生保養センター 浜坂温泉保養荘
兵庫県における地域医療の現状但馬長寿の郷 企画調整課
曾祖母の介護から夢のステップアップ県立但馬農業高等学校 (注:生徒)
但馬長寿の郷の音楽療法への取り組み但馬長寿の郷 事業課
少年野球の傷害予防の取り組みについて但馬長寿の郷 地域ケア課
独居老人の退院に向けての看護師の役割公立豊岡病院
脳挫傷後遺症患者への訪問看護の実際豊岡市訪問看護ステーション
健常者におけるゆっくりとした継ぎ足歩行練習によって認められる、足底2点識別覚の影響について(第1報)公立豊岡病院
車椅子乗車時の座位の安定について特別養護老人ホーム 緑風の郷
こうのとり荘のリハビリの取り組みについて特別養護老人ホーム こうのとり荘
ハッピーアール(歯PR)事業兵庫県歯科衛生士会 北但馬支部
地域職域健康づくり推進事業の取り組み和田山健康福祉事務所
いきいき元気アップ教室〜高齢者筋力トレーニング事業〜香美町 香住在宅介護支援センター
気軽にきねーな「まちの保健室」−いつでも、どこでも、だれにでも−兵庫県看護協会 但馬支部
個別ケアに向けた取り組みについて特別養護老人ホーム 出石荘
社会復帰施設「ほおずき」の活動について生活訓練施設 ほおずき寮
生活支援センター ほおずき
認知症があっても地域の中で普通に暮らし続けたいグループホーム かがやき
若年障害者のつどい「あすなろう会」の取り組み養父市 市民生活部健康課
療育訓練事業(はばたき教室)からの一考察新温泉町 浜坂保健センター
美方郡で初めての精神障害者小規模作業所立ち上げを支援して浜坂健康福祉事務所
失語症キャンプ事業の取り組みについて但馬長寿の郷 地域ケア課

 高齢化・過疎化が進む兵庫県北部の但馬地方に、「但馬長寿の郷」という県の機関(施設?)があります。そこで平成17年12月11日(日)に「平成17年度地域ケア研究会」が開催されました。これは、その発表の演題です。
 医療・保健・福祉、高齢者・障害者(知的・身体・精神)・児童、行政・法人・団体・高校生・・・
 さまざまな人々が、さまざまな分野の活動をポスターにまとめて発表します。1件の発表時間は、質疑も含めて実質10分あるかないか。

 それにしても・・・内容が濃すぎませんか? じっくりと、1時間は聴いてみたいテーマが多数。各セッション(4〜5件毎)が終了した後、発表者たちと語り合う場は別室に設けられますが、それに参加すると次のセッションが聴けなくなるのが辛い。
研究会の発表風景  この他に、ベテランケアマネージャーが提供した事例を基にしたグループワークもあり、発表者はもちろん、一般参加の地域ケアスタッフにとっても、充実した一日になったことでしょう。
 ちなみに、発表事例の中で登場するある高齢者は、私も親族の端くれ(血はつながっていないのですが)に連なっていたりもしています。

 「但馬長寿の郷」というのは、宿泊やイベント等が行える県立の施設として知られているようですが、理学療法士や作業療法士など小規模自治体では確保しにくい専門的人材を地域に派遣する、という役割も担っています。
(たとえば、平成5年版厚生白書・「但馬長寿の郷構想」
 ついでに言えば、以前にちょっとだけ触れた備酒伸彦氏(現・神戸学院大学助教授)が10年以上にわたって活動してきた拠点でもあります。
 かれら優秀なセラピストたちが地域で行ってきたことは、単に直接リハビリ等で関わった高齢者・障害者たちへの支援だけではありません。かれらの活動を身近で見聞きして、ともに活動してきた地域のケアスタッフたちも、その力を伸ばしてきたのに違いない、と強く意識させられた研究会でした。

 なお、この文章も写真も、掲載にあたって「但馬長寿の郷」や研究会参加者の事前承諾は一切得ていません。
 まずかったら謝ります・・・でも、「但馬長寿の郷」にかかわる皆さん、これぐらいは自分たちのホームページで宣伝してよ。あなたがたは、本当に、すごいこと、やっているのですよ。

09/1/1最終修正
 平成13〜20年度地域ケア研究会の演題はこちら



4 知的障害児の住宅改造

 前回に紹介した地域ケア研究会の事例のように華やかには発表されていなくても、ハンディキャップのある人々の生活のために取り組んでいる人々は存在します。
 私が某県福祉事務所で在宅福祉事業などの補助金を担当していた頃、ある町役場の福祉担当課から、知的障害児向けの住宅改造についての相談がありました。介護保険制度が始まって、それほど年数が経っていない頃の話です。

 知的障害者(児)向けの住宅改造については、これまでのところ、自治体によって差があるのが実情です。
 当県では、単独事業として、高齢者や障害者向けの住宅改造の助成制度があります。介護保険の住宅改修や重度身体障害者の制度が利用できる人は、そちらを優先利用していただくのが原則ですが、それらの制度の上限を超える部分については、この制度の対象となります。また、介護保険等よりも対象となる工事の範囲が広いので、要介護者や重度身障者の利用が多くなっているようです。
 知的障害者(児)も制度上は対象となっていますが、これまでは、少なくとも、その近隣地域では、実績がありませんでした。

 そもそも、知的障害児に必要な住宅改造とは、どのようなものでしょうか。  ネット上で検索しても、高齢者や身体障害者向けの住宅改修については情報が多数ありますが、当時、知的障害者(児)向けについては乏しいといってよい状況でした。現在は、いくらか改善しているのでしょうか?
 知的障害では肢体障害などとは必要な改造が異なる場合があると考えられます。たとえば、トイレなどで床面に段差がある方が、スリッパを履き替える場所は間違えにくいでしょう。もちろん、このあたりについては、障害の状況によっても微妙に変わってくるのではないかと思います。
(余談ですが、一般的な社会人でも、酔っぱらって判断力が低下したりすると、トイレのスリッパを履いたまま宴会場に戻ってくる人間がありますね。)

 実際に、どのような障害の状況に基づき、どのような改造が行われたか、については、割愛させていただきますが、町役場の担当者や、相談に関わった専門職(PTや建築関係者など)は、けっこう頭を悩ませたことと思います。福祉事務所の補助金担当者は、「先進的な事例になるから」と言って、おだてていただけでしたが(笑)

 住宅改造に限らず、知的障害者(児)については、身体障害者等に比べて援助手法の確立が遅れている・・・そういう印象を私は持っています。
(おそらくは、精神障害についても同様でしょう。)
 そういう状況の中で、ご家族や関係者との調整、上司への説明などに頑張った担当の方、本当にお疲れ様でした。


5 OCRソフト

 私のサイトは特に凝ったデザインでもなく、見栄えにもあまり(全然?)力を入れていませんが、自分なりに心がけていることはあります。
 それは、なるべく「テキストオンリー」。
 「樹解夢」の説明画面などを除いて、テキストデータ(HTML形式)を主に構成しているつもりです。

 そのねらいのひとつは、なるべく「軽く」すること。とは言いながら、介護保険法などの「大法令」を分割しないで1個のファイルとしたり、「支援費支給制度掲示板」過去ログを月毎にまとめたりしているので、通信環境によっては、重い画面を余儀なくされている方もいらっしゃるかもしれませんが・・・
 もうひとつは、視覚障害などの方への配慮です。テキストデータなら、読み上げソフトを使えば、音声化して聞き取ることが可能です。  最近は、PDF形式でも文字情報を持つファイルが出てきていますが、ネット上の多くのPDFファイルは画像データしか有していません。だいたい、PDFは「重い」のが難点でもあります。

 実は介護保険法施行前にも「法令集」のようなものを作ったことがあったのですが、その頃はOCRソフトの性能が今より低く、また、ネット上で得られる法令データなども今ほど豊かでなかったため、官報を拡大コピーしてスキャナーで取り込む(それでも誤変換が多数)など、いろいろ苦労しました。
 今はPDFファイルから直接OCRソフトに取り込むことが可能ですし、文字変換の精度も上がっています。
 今回追加した「地域生活支援事業実施要綱(案)」ぐらいなら、特定の文字の誤変換(ソフトによって、ちょっと癖がある)を除けばほぼ100%、正しく変換されました。

 ただ、私のサイトの中で1箇所、本来は画像を使うべきでないところで画像データを使っているところがあります。
 トップページ最下段のメールアドレスです。
 スパムメール対策ということで、ご理解ください(うーん、イヤな世の中ですね)。


6 誕生月の訪問

 生活保護担当ケースワーカーをしていた頃の話です。
 ある日、町役場の福祉担当課から電話がかかってきました。ちょっと認知症傾向のある独居高齢者の介護保険料(年金からの特別徴収)が未納になっている、との情報でした。
 あわてて訪問、いろいろ調査した結果、計2名の老齢年金の支給が止まっていました。2名とも同じ誕生月の方で、社会保険庁から送付された「年金受給権者現況届」を返送していなかったのです。

 「現況届」は住所、氏名、生年月日などを書くだけの簡単なものですが、誕生月に出しておかないと、年金の支給が一時止まってしまいます。遅れても提出すれば、後から遡って支給されますが、介護保険料の特別徴収(いわゆる天引き)は中止になって普通徴収(納付書で納付)となりますし、年金受取通帳から引かれるはずの公共料金などが残高不足で未納になっていました。
 それに、何よりも生活費をどうするか。

 「老齢基礎年金受給者よりも生活保護受給者の方が収入が多い」(本質的に言えば、最低生活費よりも年金の方が少ない)という問題がクローズアップされてから誤解されている方もありますが、保護世帯で年金を受給している人は少なくありません。たとえば保護基準額が6万円、年金収入が月額2万円なら、不足分の4万円が保護費として支給されます。
 すぐに現況届を送付したとしても、年金が支給されるのは早くとも1〜2か月後でしょうか?
 それまで、(この例で言えば)月4万円で生活が可能か、年金の収入認定を解除して6万円を支給すべきではないか、その場合、年金が遡って支給されたときに問題が出ないか、など、頭を悩ませました。

 どう対応したか、詳細は忘れてしまったのですが(笑)、憶えているのは、それから保護世帯の訪問計画を見直ししたことです。
 保護世帯は、必要に応じて訪問回数(頻度)を設定します。長期入院・入所者は6か月に1回、頻繁に訪問する必要がある世帯には毎月、など、格付けを行い、それに基づいて訪問します(実際には、計画どおりに行く方が少ないのですが)。
 認知症傾向がある独居者はもちろん、それ以外の年金受給者についても、とにかく誕生月には訪問して、現況届を提出したかどうかを確認するようにしました。
「(ちょっと過ぎましたが)お誕生日おめでとうございます。ところで、年金の書類を出されましたか?」
「(照れながら)いやあ、この歳まで生きて、皆さんにお世話になって生活させてもらって、おめでたいこともないんやけどね。現況届は出しましたよ」

 毎月、あるいは毎日訪問されている職種の方々も、よろしかったら、誕生月に声かけしていただけませんか。


7 即席麺の開発者

 1月5日、安藤百福さんが亡くなられました。
 インスタントラーメンやカップ麺の開発など、食文化に大きく貢献された96歳の生涯でした。そう言えば、NHKの朝の連続テレビ小説「てるてる家族」に、氏がモデルと思われる人物が登場していましたね。

 個人的に印象に残っているのは、阪神・淡路大震災で応援に行っていた際、厳冬期の被災地で食べた暖かいカップ麺の味です。いや、ひょっとすると、同業他社の製品だったかもしれませんが(笑)現在出回っている全ての即席麺が氏の置き土産と言えるかもしれません。
 おそらく、世界各地の被災地で、氏のことを全く知らないような被災者が人道援助品のカップ麺を食べていることでしょう。人類の文明に貢献するというのは、こういうことを言うのに違いありません。
 心からご冥福をお祈りいたします。

 蛇足ですが、日清食品を含めた、氏の意志を継ぐ方々へのお願いです。
 ぜひ、高齢者が安心して食べられる程度の減塩即席麺を開発してください。できれば、脂質も減らしていただきたい。災害時の非常食として、需要があると思います。
 さらに言えば、即席麺の味に慣れ親しんだ団塊の世代(及び、それ以降の世代)が高齢化したときのことを考えると、かなり将来性のある市場になるように思うのですが、いかがでしょうか。


8 うぃずライン〜つながるブログ〜

 うぃずライン」とは、高齢者保健福祉医療について考える有志により運営するサークル「うぃずライン〜wel」が発行する情報誌です。
 実際には、インターネット上のサイトやブログにある記事を集めて掲載し、それを紹介する活動を行ないます。
 (上のリンク先に、PDF形式でダウンロードできるページがあります。)
   これまでに発行された「うぃずライン」の主な内容はこちら
   なお、ネットワークの設定などで、「うぃずライン」のページからダウンロードできない方は、こちらをご利用ください。


 この企画の中心メンバーのひとりが、訪問介護のQ&Aなどの収集分析等で有名なサイト「狸乃穴倉」を運営している、たぬさんです。
 彼がブログをヤフーで開設したのが、2005年6月のこと。当初は、WELなど福祉系掲示板からの訪問者のコメントが主でしたが、徐々にヘルパーやケアマネージャーなどのブロガーの訪問も増え、介護現場の人々(たぬさんの言葉を借りると「実践領域」の人間)、行政関係者(「制度運営側」の人間)など、立場の異なる多くの参加者でにぎわうようになりました。
 そして、2006年夏。
 「実践領域」と彼女自身のブログ上で、真摯かつエネルギッシュに活動を展開している、あるケアマネージャーが、彼のゲストブックの戸を叩きました(ハンドル名は書かなくても、たぬさんのブログ付近をご覧になっている方々は、おわかりになるかもしれませんが・・・)。
 たぶん、このあたりから議論は加速し、今回の企画を生み出すような流れが創り出される一因になったように思います。

 特筆すべきは、この活動の参加者が、ネット上以外では接触したことがない関係の方が多いということでしょうか。編集に携わる「うぃずライン〜wel」のメンバーも、少なくとも本企画立ち上げ時には、ほとんど、お互いに会ったことがない状態でした。
 このような中で、第1号の発行にたどり着けた、ということは、中心メンバーの努力、関係者の協力もさることながら、時代の流れ、社会の求めるものもあったのかもしれません。

 ということで、「うぃずライン」は、立場や経験が異なる多くの人々が執筆しています。「難しすぎる」あるいは「くだけすぎ」など、さまざまな感想をもたれるかもしれませんが、どうか大目に見てください。
 そして、介護保険に限らず、社会制度を少しでもマシにするために何ができるか、考えてみませんか。


9 情報発信する家族介護者たち〜うぃずライン第3号〜

 うぃずラインも第3号の発行となりました。
 (1号が前半・後半に分かれているので、実質4号という感もあります。)

 今回の特集テーマは「在宅とは〜改めて考えてみる」

 地域で多職種協働によるチームケア体制を構築して在宅生活を支える話については、たぶん誰かに詳しく取り上げられると思いますので、ここでは書きません。いや、もちろん、重要な問題なのですが、そういう専門的な解説は置いといて(笑)、印象的なのは、家族介護者の記事が3件もあるということです。

 ひとりは、四半世紀以上に渡って夫の母親を介護してきた妻。ひとりは、専門職と家族介護者、両方の立場をもつ看護師。そして、もうひとりは、介護と無関係の仕事をしながら、母親の介護を続ける若者。
 どの方も、「うぃずライン」編集部が掲載を依頼する前から、家族介護者同士はもちろん、多くのケアスタッフたちが訪問しているブログの管理者です。介護に直接関係のない方々の読者も少なくないようで、この業界としては人気ブログといえるでしょう。

 人気の理由のひとつは、語弊を恐れずにいえば、おもしろいこと。
 深刻な話も多いはずですが・・・

・自分自身も含めて客観的に見据える。
 ブログに書く、ということ自体、ある種の客観化の過程といえるかもしれません。
・ユーモアを忘れない。
・楽しい話題にも目を向ける。これは、動物や食べ物ネタなどが多いようですね。

 何か問題が起きたとして、ケアスタッフや他の家族介護者の寄せるコメントも勉強になると思いますが、そのケアスタッフたちもそのブログで学ぶことは少なくないはずです。
 今回「うぃずライン」で紹介した人々以外にも、興味深い家族介護者のブログは多数あります。
 ケアスタッフはもちろん、行政職員(自治体も厚生労働省も)も必見です。


10 対話の始まり〜うぃずライン第4号〜

 うぃずライン第4号」は、分量が増えて、第1号以来の2分冊となりました。
 (前半:1月28日、後半:1月31日発行)

 ネット上の掲示板、ブログなどで、自治体(特に介護保険の保険者)に対して、疑問や批判の声が挙がることがあります。その内容はさまざまですが、中には、本当に法令を勉強しているのか、制度の趣旨を理解しているのか、といいたくなるような自治体職員の例も、残念ながらあります。もちろん、そういう職員は少数派だろうと思いたいのですが・・・
 そういう状況を受けて、今回は、「保険者へのメッセージ」という、やや重いテーマの特集となりました。

 ただ、たとえば現場の専門職で、問題ある保険者に対して「うぃずライン」が自分たちの代わりに過激に怒ってくれるのではないか、と想像された方があったとしたら、かなり期待はずれだったのではないでしょうか。
(私の記事については、過激だと感じる人がいるかもしれませんが・・・)

 前半と後半では多少、表現やニュアンスに差があるかもしれませんが、全体としては、「保険者へのメッセージの伝え方」を現場サイドに提示した形ではないかと思います。
 象徴的なのは、こういうテーマにもかかわらず(あるいは、こういうテーマだからこそ、かもしれませんが)、現場からだけでなく、保険者を含めた自治体職員からも記事が寄せられたことです。

 私たちが求めるのは、保険者と現場が対立して争うことではありません。
 必要なのは、対話です。

 そして、伝えるのは、あなたです。


11 最近読んだ本2冊(生活保護と住宅改修)

 書評というほどのものではありませんが、「うぃずライン」以外のことも少しは書いてみます。

生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困

 ウェブサイト「生活保護110番」を運営されている大山典宏さんの著書です。
 生活保護については、いわゆる「水際作戦」など受給抑制的な行政の対応が批判されたり、逆に(おそらく一部の)不正受給者の問題がクローズアップされたりします。マスコミでもネット上の書き込みでも、極端な意見が出がちです。
 本書は、それらについて客観的な分析を心がけながら、さらに世間では気づかれにくい本質的な問題点をも明るみに出しています。
 なお、本書中の「保護率」は、少なくとも第1版第1刷では「%」(パーセント:百分比)で表記されていますが、正しくは「‰」(パーミル:千分比)です。一般ではあまり使われない単位なので、編集作業時に生じた誤植のようです。
 08/03/01追記:少なくとも第3刷ではパーミルに修正されています。

 <参考サイト:生活保護110番

OT・PT・ケアマネにおくる 建築知識なんかなくても住宅改修を成功させる本

 著者は、多くの地域ケアスタッフとともに住宅改修などに関わってこられた、一級建築士・岡村英樹さんです。
 本書はいわゆる住宅改修のノーハウ本ではありません。(と、本の最初にも書いてあります。)
 環境整備には「正しい答え」はありませんが、「正しいアプローチ」の仕方があります。(とも書いてあります。)
 ケアスタッフ、建築職、どちらの立場の方が読まれても、目から鱗の話はあると思います。(たとえば、「指示どおりに手すりが付かない」とお嘆きのケアマネのあなた!)
 さりげなく入っている、作業療法士のコラムもお勧めです。

 <参考サイト:三輪書店
 (都合上、同書店の「地域リハ・介護・福祉 他」のページに直リンクしています。商品を紹介していて文句を言われることはないと信じていますが(笑)できればフレームのないページを作っていただいた方が紹介しやすいと思います。)



12 うぃずライン第5号の周辺の話題

 うぃずライン第5号の発行となりましたが・・・
 まともな紹介は誰かがすると思うので、やや偏った視点からトピックス的に並べてみます。

 その1:うぃずライン編集部は「仲良し集団」ではない。
 第5号の特集「チームケア」の記事をめぐって、かなり白熱の議論となりました。文字情報が頼りのネット上でのやりとりなので、取っ組み合いのケンカにはなりませんでしたが。難しいんですよね、顔を合わせず、言葉だけで思いを伝えるということは。
 普段のBBSなどでのやりとりも含め、反省するところがあります。

 その2:載せたい記事が載せたい形で載せられるとは限らない。
 編集メンバー全員が感動する優れた記事でも、特集テーマとの関係や、個人情報の取扱いなど、さまざまな理由から掲載を断念する場合があります。また、掲載にあたって、修正をお願いしたり、作成者の方が自主的に再構成される場合もあります。
 まだお声をおかけしていない賛同メンバーの方のブログにも、本当は素敵な記事があるのですが・・・ごめんなさい。

 その3:narisawaさんの本が出た。
 連載記事「運営基準に則した居宅介護支援事業の展開」の執筆者・narisawaさんの著書が発行されました。
 「居宅サービス計画書 作成と手続きのルール」。ネット上でも好評のようで、うぃずライン関係者ではない人々の書き込みも見かけます。実は、私はまだ買っていないのですが(笑)

 その4:第5号の臨時号を・・・
 特集「介護報酬・基準改定に向けての提言」として、4月初旬に発行すべく準備中です。
 現在の介護保険制度にはいろいろ問題点がありますが、単なる愚痴ではなく、こういう改善方法はどうだろうか、という提言を集めています。そのままの形ですぐに実行できるものとは限りませんが、制度をいくらかでもマシにするための考える材料としてご活用いただければ幸いです。

<臨時号発行に際しての、やや堅めの追記>
 4月4日、第5号の臨時号(特集「介護報酬・基準改定に向けての提言」)発行です。

 介護保険法附則では、第2条から第4条にかけて施行後の検討について書かれていますが、さらに第5条では、
「政府は、前3条の規定による検討をするに当たって、地方公共団体その他の関係者から、当該検討に係る事項に関する意見の提出があったときは、当該意見を十分に考慮しなければならない
と規定されています。
 また、平成18年4月からの改正法(平成17年法律第77号)の附則第2条第2項では、政府は、施行後3年を目途として、
予防給付及び地域支援事業について、その実施状況等を勘案し、費用に対するその効果の程度等の観点から検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする
とあります。

 「うぃずライン」に限らず、多くの関係者から建設的な提言が寄せられ、それらの意見が十分に考慮されて、制度が少しでも改善されることを心から願っています。


13 「うぃずライン」は第6号で終わるのか

 うぃずライン第6号」の特集テーマは、「インターネット活動について振り返る」です。
 お勧めは、「ブログの威力〜小規模多機能型居宅介護についての情報交換実例」です。
 医療機関のソーシャルワーカーとしてのキャリアを持つブロガーが投げかけた疑問点に、実際に小規模多機能型居宅介護の経営に携わっている二人が回答を寄せた実例を、編集部で再構成してみました。
 また、逆に、小規模多機能型居宅介護の経営者から投げかけられた質問に訪問看護関係者が回答している例も紹介しています。
 いずれも、たとえブログでの情報交換自体には興味が薄くても、小規模多機能型居宅介護に関心のある方なら、一読していただく価値はあると思います。

 さて、「うぃずライン」についてですが、当初計画していた6回の発行を実現することができました。
 (実際には、臨時号などの発行で、すでに6回を上回っていますが。)
 それでは、今回で終了するのでしょうか?
 それとも、何らかの形で今後も続くのでしょうか?

 今後の「うぃずライン」のあり方については、実は、さまざまな議論があります。
 ただ、どういう形になろうと、このような企画が生まれるに至った状況、そして、思ったよりも広範囲の方々に読んでいただける、という状況、時代の流れというようなものは、今後も続いていくと思います。
 なお、今後の方向性など、ご意見については、「うぃずライン」中で記載しているBBS等に寄せいただければ幸いです。
 ともかく、6号までご協力いただいた方々、お読みいただいた皆様、ありがとうございました。

<追記>「介護保険法を勉強しなおす」〜6号臨時号発行〜

 6号までに入りきらなかった、Jさんの連載記事「介護保険法を勉強しなおす」の第8条の後半部分と第8条の2を収録しました。これで、介護保険法の第1章(総則)が完了したことになります。
 併せて、Jさんと「うぃずライン」編集部・べあさんとの対談も掲載しています。

 「介護保険法を勉強しなおす」は、社会福祉士であるJさんが、介護保険法及びその周辺の法令を平易な文章で表現し、それを公開しているブログからの連載記事です。
 介護保険法でも障害者自立支援法でも同様ですが、法律の冒頭には、「総則」として、制度の目的、各機関(国や都道府県、市町村など)の役割、それに用語の定義などが記載されていることが多々あります。ここを熟読して理解しておくと、各サービスがどういう目的をもって行われるものか、理念的なものがわかります。また、自治体や事業者の間で制度解釈について差が出るようなことがあったとしても、究極的には、この法の理念に照らして考えていくべきものではないかと私は思います。
 なお、Jさんの「介護保険法を見直す」という取り組み自体は、「総則」以降も彼女のブログで続けられていますので、関心のある方はどうぞご覧ください。
 Jさんとべあさんとの対談については・・・これは、記事を見ていただくしかないと思います(笑)

<追記の追記>インターネット活動を振り返って(うぃずライン編集メンバーによる座談会)

 6号の付録です。機会があれば、もう少し詳しく書きます。


14 深さと広がり〜うぃずラインNo.6付録号までを終えて

 先日、ネット上で知り合った人たちの集まり(一般的なネット用語では「オフ会」。最近一部で流行っている表現では「りある」)に、少しだけ顔を出してきました。
 今回の集まりは、「うぃずライン」の集会ではありませんが、「うぃずライン」に賛同していただいている方、賛同者に名を連ねていなくても同様の熱い想いの方たちにお会いすることができ、短時間でしたが本当に有意義でした。

 帰りの電車の中で、酔いの残る頭で考えていたのは、「深さと広がり」ということです。
 これは「うぃずライン」のスタート前からある課題で、
・内容を深めていくこと
・関わりのある人(あえて賛同者とか執筆者とかに限定しない)を広げていくこと

を、どうバランスを取っていくか、編集メンバー内でも議論がありました。

 方法としては、
・高度なことをわかりやすく書くこと
・難しい表現であっても、つい引き込まれて読んでしまうほど魅力的な文章を書くこと

などが考えられますが、これがまた(当然)難しい。

 もう、すでにばらしちゃっていますが、編集メンバー内では、他にもやや深刻な対立がありました。
 そのわだかまりは、けっこう尾を引いていたと思いますが、おそらく、No.6付録号掲載の座談会のときに、いくらか、あるいは大部分は解消されたように感じています。
 ひとつは、複数スレッドの並列的同時進行(注)というすさまじい議論の中で、はっきり言って「わだかまり」を感じたり遠慮したりする余裕すらなかった、というのが大きいように思います。ちょっとどんな状況か、わかりにくいだろうと思いますが(笑)
 まあ、考え方によっては、けっして仲良し集団ではないチーム(しかも、一堂に会したことが一度もない)が、曲がりなりにも6号プラスアルファの冊子を出すことができたわけで、賛同者の皆さんと運命に感謝すべきなのでしょう。

座談会のスレッドのイメージ  今回お会いできた方は、賛同者の中でも一部の皆さんでしたが、それでもさまざまな方々にお話を伺うことができました。理想のケアと組織(あるいは組織の長)との間で悩み、理想に向けて踏み出すことを目指そうとする方、踏みとどまって少しでも改善していこうとする方、理想以前の厳しい地域環境の中で道を切り開こうとしている方、既存のサービスや介護保険・障害者サービスなどの枠を超えた道を探ろうとしている方・・・
 そして、たとえば政治的立場、ソーシャルアクションなどに対する考え方も、たぶん差があるでしょう。
 それは、一枚岩の組織から見れば弱さかもしれませんが、さまざまな人がいる、ということは、ある意味、途方もない強みとも言えます。
 6号が出た以降も、新たに賛同していただいている方があるのも、心強い限りです。

注:複数スレッドの並列的同時進行
 座談会は編集メンバーが一堂に会するのではなく、BBSを使って行われました。
 開始後30分を過ぎたあたりから、右図のイメージのように、複数のスレッドを並列的に同時進行する形で議論が繰り広げられました。「付録号」に掲載されているのは、話のつながりがいくらかでもわかりやすいように編集したものです。
 ちなみに、本当にヤバイ話はカットされています(笑)



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